ペットを飼いはじめたら、「ずっと健康で長生きしてほしい」「ずっと一緒に生活していきたい」と思われることがあると思います。

今回は、科学的な側面からペットの“寿命”に関する内容を紹介していきたいと思います。

犬・猫のテロメアに関する研究

「テロメア」とは、染色体の両端にある構造物です。テロメアは細胞の老化に大きく関与するものの一つと考えられており、細胞が分裂するたびにテロメアは短くなり、やがて分裂しなくなります。細胞分裂できる回数に制限があることから「命の回数券」とも呼ばれています。

テロメアは、私たち人間だけでなく犬・猫などの哺乳類や、昆虫、植物にも存在しています。人には23対の、犬には39対、猫は19対のある染色体全ての両端にテロメアが存在しています。

犬や猫のテロメアも人間と同じように老化に関わっているのかという研究結果をシエラサイエンスのビル・アンドリュース博士が発表しています。以下の資料をご覧ください。

こちらの資料は、犬・猫の種類別でのテロメアの長さ(縦軸)と年齢(横軸)を表したグラフになります。どの種類も年齢を重ねるごとにテロメアの長さが下降傾向にあることがわかるかと思います。

こちらの研究結果のレポートには、犬・猫のテロメアは人間のテロメアに非常に類似しており、犬・猫もテロメアの長さが老化に大きく関わっていると記載されています。

また、2012年には、カナダの研究チームでも犬のテロメア研究を行っており、寿命の長さとテロメアの長さに関わりがあると発表しています。その研究では、26犬種、175頭の犬のテロメアの長さを調べて平均値を出し、その中で1犬種3頭以上について調査をした15犬種についてのデータ解析を行いました。すると、犬種の平均寿命の長さとテロメアの長さに強い相関が見られ、犬の寿命の決定にテロメアが何らかの形で関わっていることが示されたのです。

人と同様に、犬もオスの方がメスよりもほんの少しだけテロメアが短くなっていくスピードが早いこともわかりました。これは猫に関しても同じことが言われています。つまり、犬・猫のテロメアも人間同様、老化に大きく関わっている可能性が非常に高いといえます。

テロメアの長さは老化以外にも短くなる原因はあるのか?

先ほども紹介したように様々な研究によって、人も含めた動物の老化にはテロメアが関係していることがわかっていますが、一概に遺伝的背景で寿命が短くなるわけではありません。

環境的な要因(外的要因によるストレスなど)もテロメアの長さに少なからず影響を及ぼしています。個体が持つ遺伝子は変えることはできませんが、遺伝的な面をカバーし、テロメアが失われていくスピードを遅くすることはできると思います。

愛するペットと長く一緒にいるためには?

この記事を読まれている方のほとんどの方は、犬や猫をペットで飼われているかと思います。少しでも大切なペットと少しでも長く暮らすために気をつけていただきたいことがあります。

それは、食事、予防、病気の早期発見の3つです。

1・食事

まずお伝えしたいのが食事です。犬、猫達は自分で食事を選ぶことができずに、何を食べるかは全て飼い主次第です。

もし粗悪な食事やペットに合わない食事は、身体的にストレスを与え、結果として様々な病気を引き起こす原因となります。

近年のペットフードは昔と比べ随分品質が向上し、どれを選んでもそうそう粗悪なものには当たらなくなりました。しかし最低限、「ペットフード公正取引協議会」あるいは「AAFCO(米国資料検査官協会)」が定める栄養基準を満たしているものを選んであげるようにしてください。ペットにとってなるべく合う食事を探してあげましょう。

2・予防

次に、予防です。予防にあげるとすれば、ワクチン接種でしょう。犬や猫のワクチン接種は非常に重要です。

ペットの健康を損ない、場合によっては死に至ることもある感染症からペットを守ることができるからです。「室内飼いだからワクチンは打たなくていい」とおっしゃる飼い主もいると思いますが、伝染病の中には空気感染するものありますし、飼い主の靴や洋服に付着して伝染病の病原体がお部屋の中に持ち込まれるケースもありますので室内飼いの方も油断はできません。

決してワクチン接種は必須ではありませんが、一定期間病気に対する免疫を作り、ペットを感染症のリスクから守ることができるので予防としてはおすすめです。

3・病気の早期発見

最後に、病気の早期発見です。普段からペットのことを誰よりも知っているはずの飼い主でも意外と気づかないのが、ペットの体の不調です。

これは犬、猫だけでなく、野生の本能が残っている動物すべてに言えることなのですが、動物は「自分の弱みを隠す」生き物です。野生の中だと、弱みを見せると食べられてしまうからです。

そのため、多少のことでは痛がったり、苦しがったりすることがないため人間から見ると一見病気ではないように見えてしまうのです。とはいえ、大切なペットの異常にはなるべく気づきたいですよね。ペットの体の不調に気づくためには、普段からペットとスキンシップをとり、日常の行動を観察する必要があります。

上記でもお伝えしたように、テロメアの長さは遺伝的なものでは決まりません。人間でも外的ストレスで様々な病気を引き起こす場合がありますが、もちろん犬・猫にも同じことが言えます。

犬や猫は人間より寿命が短い傾向にあるため、適度な運動や、ペットにストレスを与えない生活環境を心がけ、健康でより長い期間を一緒に過ごすことができるよう、日頃から意識して暮らしていきましょう。